帯状疱疹はどのような病気かご存じでしょうか。ほとんどの患者さんが罹ってからどういう病気か認識することが多いようです。
帯状疱疹は子供の時に日本人の9割以上が罹る水痘(みずぼうそう)の再発で、その意味では日本人の9割方に帯状疱疹になる可能性がありますが、実際に発病するのはそのうちの2割から3割と言われています。若年者に比べて高齢者に多くまた悪化しやすい傾向が見られます。
水痘のウイルスは知覚神経の根元の神経根といわれる部分に潜んでいて、免疫の力が弱ったりした場合にその神経づたいにその神経を破壊しながら末梢、つまり皮膚へ向かって広がってゆきます。皮膚に発疹の生じた時はすでに神経はウイルスにすっかり侵されてしまっているのです。だから大抵の場合、発疹の生じる数日前からその部位に何らかの痛みとか風邪のような全身症状が生じることが多いのです。
私のペインクリニックを訪れる4人に1人は帯状疱疹
帯状疱疹は頭のてっぺんから足の先までどこでもできる可能性がありますが、一番多いのが胴体(背中から胸部にかけて)で、2番目が額(前額)です。手足にも出来ますし陰部に出来る場合もありますが、陰部に出来た場合は痛みが長引いたりすることがあり、少々厄介です。帯状疱疹は普通、片側にしかできません(扁側性)。その名前の由来は胴体に生じた場合、知覚神経の支配領域に一致して背中から胸にかけておび状に発疹がべったりと生ずるからです。
何れにしてもこのウイルスに侵される神経は痛みを伝える知覚神経なので必ず痛みを伴います。時に夜も眠れず食事もとれないほどの痛みを生じることもしばしばです。私のペインクリニックを訪れる4人に1人は帯状疱疹の患者さんですが、最初に痛みがなく水泡が治りかけてから痛みの出だす患者さんのほうが痛みの程度が強くしかも長引く傾向があるようです。
ウイルスを殺す薬の投与と痛みの治療の2本立てが基本です
治療は出来るだけ早期に開始することです。早ければ早いほど早く治り、痛みも軽く、神経痛が残りません。発疹は皮膚に現れ始めると一晩毎に、花が咲くようにパッパとあっと言うまに拡がります。診断がついたら直ちに治療を始めなければいけません。
まず(1)ウイルスを殺す薬の投与と、(2) 痛みの治療の2本立てが治療の基本です。ペインクリニック以外では痛みの治療はほとんど行いません。経口での鎮痛薬投与では帯状疱疹の痛みに対してほとんど効果がありません。神経ブロックが有効ですが、単なる知覚神経ブロックよりも交感神経ブロックを伴う硬膜外ブロックの方が気持ちよく楽になるようです。痛みは我慢するものではありません。帯状疱疹の痛みを治療せずに放置すると疱疹後神経痛(難治性疼痛疾患)に移行する場合が多いのです。
帯状疱疹の出来始めはよく虫刺されと間違われ、かきむしってかきこわしたり、とんでもない塗り薬を塗って酷い状態にしてから来院する患者さんが結構いますが、餅は餅屋にまかせてください。これはと思ったらすぐに医者に相談してください。可能ならばペインクリニックが理想的(これは内緒)。たかが帯状疱疹、されど帯状疱疹。ご用心めされ。
萱場泓郎
萱場医院ペインクリニック(2008/2)