アレルギーをめぐる誤解はなかなか消えない(2)

アレルゲン回避だけではほとんど治りません

皆さんは、アレルギー性疾患のおおもとの原因はアレルゲンだと思っているでしょうから、「アレルゲンからの回避だけで治すのは無理です」と医師から言われると、大抵は意外な顔をなさいます。実際、アレルゲンからの回避で病気が完治できるのは、スギ花粉症に対して外国(北海道でも可)に移住する場合ぐらいであり、他の花粉症(カバノキ科、イネ科、キク科など)となると、亜熱帯から亜寒帯までのたいていの場所に生えており、完全に避けることはまずできません。

ペットアレルギーも自宅の室内で飼うのをやめれば当面の症状は出なくなりますが、飼育中の別の住宅に行けば再発するし、高層住宅のエレベーターや公共スペースでも犬・猫と遭遇する機会もあるので、治ったと言える状況にはありません。ダニやカビも、極力減らすことできますが、身の回りから根絶するのは不可能です。このようにアトピー体質をもった人の多くは、身の回りにあるものに感作されて発症するので、完全に避けるなどというのはそもそも容易ではないのです。

アレルゲン対策は、病状改善の足をひっぱらないよう、医師による正しい診断にもとづいて、治療の一環として適切に行われるべきものですが、それだけで病気を治せるものでないことをご理解ください。一方、アレルギー炎症を改善する薬物を用いた対症療法は、病状改善にとって最も有効な方法です。症状でお困りの場合や長期的にみて必要だと医師が判断した場合には、適切に継続していただきたいと思います。

市販のものを買って飲んでも体質はかわりません

健康食品やサプリメントのたぐいを摂取したりすれば、体質がかわってアレルギー性疾患が治るかもしれないと思っている人も多いのですが、残念ながらほとんどが無駄な努力に終わります。よくなったという話が体験談として載っている広告もあるでしょうが、アレルギー性疾患は季節や年度によって変動したり、稀に自然治癒したりしていることをお忘れなく。使用した人の何分の1かの病状がよくなったなどという製品を、一部の人の体験談を信じて買ってみても、大切な貯えを減らしてしまいがっかりするだけでしょう。

医学の到達点からみて有効率が高い根本治療と呼ぶことができるのは、アレルゲンに対して耐性ないし免疫寛容をつくり出す治療である、特異的免疫療法だけです。スギ花粉エキスを少ない量から徐々に増やして繰り返し注射を行う方法や、食物アレルギーの原因食物を毎日わずかずつ増やして食べてもらう経口耐性誘導法などがすでに実用化されています。いずれも専門医の指導のもとで行う治療ですので、くれぐれもご自分の判断でなさらないように。

蓑島 宗夫
(松本市 みのしまクリニック)2011/8

お肌と健康